不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


「あ、あの……大丈夫なんでしょうか……? 私のせいで、お仕事のことも」

「気にすることない。あのくらいしないと、諦めもつかないだろうからな。提携のことも、あちらの代表と話はつけてある」


 そう言った千晶さんは「そんなことより……」と、私の頬をさらさらと撫でた。


「さっき、言いそびれた言葉の続きが聞きたい」

「え……?」

「邪魔が入る前、言おうとしたこと」


 そう言われて「あっ」と声が出る。

 千晶さんは思い出した様子の私を、黙って待ってくれた。


「私……幸せです。って、言おうとしてました」


 私を見下ろす千晶さんを見つめ、改めて言いそびれてしまった気持ちを伝える。

 言葉にすると、どこかくすぐったい。

 だけど、心の底から今、そう思っている。


「もっと、今よりもっと幸せにする」


 千晶さんは柔和な笑みを浮かべ、「約束する」と言うと、優しい口付けを落とした。





Fin*

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