不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


 桜坂社長が私の元に現れたということに、母親は驚くというよりも、あなたももうそんな年頃なのね、という感想を述べたのだった。


「そ、それじゃあ、私は桜坂社長といずれ結婚するっていうことになるの? 許婚って、そういう意味なの?」

「……そう、ね。お母さんも詳しくはないけど、そういうことになっているのだと思うわ」


 そんな、滅茶苦茶な……。

 ここにきてやっと、さっき桜坂社長が言っていた言葉の意味がようやくわかり始める。


『お前と暮らすのは本意ではないけど、とある理由から仕方なくそばにいてやらなくてはならない事情があってな』


 それはこの許婚という、当人たちの気持ちを無視した決め事のことだったのだ。

 本意ではない――。

 桜坂社長の言った、まさにその通り……。

 いつもと変わらない平凡な日常に突如起こった、まさに青天の霹靂。

 理解も納得もできないまま、その日は何時になっても寝付けなかった。


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