不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
駅に向かって歩いている歩道の先、ブラックスーツをきっちりと着こなした桜坂社長の姿があった。
きらりと光る尖った革靴がこちらに向かって近付いてくる。
「どうした?」
急に足を止めた私に、横から修哉が声を掛けた。
「あ、えっと……」
「……?」
そうこうしているうちに、私たちの目の前まで桜坂社長が迫ってくる。
修哉もやっと私が足を止めた意味を察したように、やって来た桜坂社長に目を向けた。
「連絡を入れたんだが、気付かなかったようだな」
「えっ、あ、そうだったんですか?」
開口一番焦る言葉が飛んできて、慌ててバッグからスマートフォンを取り出す。
桜坂社長の言う通り、数十分前に区切りのついたはずのメッセージに続きが送られてきていた。
「すみません、気付かずに……」
「それは構わない。場所が近かったから迎えに来ただけだ」
そう言った桜坂社長は、一緒にいる修哉に目を向ける。
修哉も背は高い方で百八十近くあるはずだけど、桜坂社長が更に高身長のため修哉が普段よりも小さく感じられた。