不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


「つぐみを送ってくれてありがとう」


 桜坂社長は紳士的に微笑み、修哉に対して丁寧にお礼を口にする。

 突然のことに修哉も驚いたのか、「いえ……」と短く返事をした。

 その光景を目の前に、私の鼓動はトクトクと高鳴り出す。

 まだ会って間もないのに、下の名前を呼び捨てで呼ばれたことに心臓が反応してしまった。


「これからもどうか、友人として仲良くしてやってください」


 向かいに立っていた桜坂社長がさっと私の横へと回り、そっと背中に手を添える。

 修哉に向かって「では、失礼」と言うと、エスコートするように私の背を優しく押した。


「あ、またねっ」


 その場を連れ出され、慌てて首だけ修哉に振り向き別れの声をかける。

 修哉は突然のことに相当驚いたのか、立ち止まったまま離れていく私たちを見つめていた。

< 28 / 135 >

この作品をシェア

pagetop