不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


「あ、あの、すみませんでした。スマホ、気付かずで……」

「別に構わない。急に連絡したのはこっちだからな」


 桜坂社長の一歩は脚が長いため大きく、その間に私はトトっと二歩要する歩幅。

 それでもなんとか歩調を合わせて歩いていくと、この間乗った高級車が道路脇の路上パーキングに駐車されていた。

 特に行き先の話もされないまま、助手席へと連れていかれる。

 ドアが開かれると、背中から添えられていた手が離れていった。

 指摘されて確認したメッセージには、最後にどこで食事をしているかを私が返信したのに対して【それなら近くにいるから迎えに行く】と入っていた。

 てっきり、気を付けて帰るようにと入ってきたのが最後だと思ったから、その後スマートフォンを確認もしなかったのだ。

 運転席に乗り込んできた桜坂社長は、無言のままシートベルトを装着する。

 薄暗い車内で、夜の街のネオンに浮かび上がる綺麗な横顔につい見惚れてしまう。

 すっと通った鼻筋と薄い唇。まさに美しい横顔の見本みたいだ。


「知人のインテリアコーディネーターに依頼して、これから住むあの部屋をデザインしてもらった。仕上がったと連絡がきたから、見に行こうと思って迎えにきた」

「そうだったんですか……」


 改めて会ってそんな話をされ、やっぱりこの間のは間違いではなく現実の話だと再確認する。

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