不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


 許婚――。

 桜坂社長は、このことを一体どう思っているのだろう……?

 ちらりと車を走らせ始めた横顔を盗み見る。

 相変わらず端整な顔からは感情は読み取れず、ただ淡々とやることをこなしているだけという表情をしている。


『お前と暮らすのは本意ではないけど』


 あの時言われたその言葉が私の中に印象深く残っていて、複雑な感情を巻き起こさせる。

 桜坂社長の方なんて私が思うよりも遥かに、私との婚姻なんて内心望んでいないはずだ。

 どう見ても自分とは釣り合わない子どもで、その上、容姿だって釣り合いが取れていない。

 更にごくごく普通の家庭の、特になんの取り柄もない会社員をしている一般人だ。

 どう考えても桜坂社長が一緒になる相手として不足している。
 不足というか、完全に圏外だ。

 祖父母たちの代が決めた話なのかもしれないけれど、このまま話を進展させてしまっていいのかと不安に思えてくる。

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