不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
この許婚をどう思っているかと訊くなんてことはもちろんできないまま、この間連れていかれた新居だという高級タワーマンションに到着する。
「特に要望を受けなかったから、向こうに任せてコーディネートしてもらった。自由に見てみてくれ」
「はい……」
この間来た時とは雰囲気ががらりと変わり、広いリビングはすぐにでも生活ができる環境に整えられていた。
落ち着いたモノトーン調のインテリアコーディネートで、とても上品で居心地が良さそうな空間。
観葉植物もところどころに置いてあり癒される。
キッチンには備え付けのもの以外の調理家電がやはりモノトーン調で用意されていて、収納棚をこっそり開けてみると食器なんかも取り揃っていた。
バスルームやトイレは文句なしに広く、特に洗面室はうちの実家のものとはかけ離れていて、大きな鏡と広々とした洗面台がグレードの高いホテルを彷彿とさせた。
ひとつずつ閉められた扉を開けていき、最後に足を踏み込んだ部屋に一瞬でどきりとする。
扉から右奥へと広がる部屋には天井までの広いガラス窓に平行して大きなベッドがどんとひとつ設置されていて、明らかにふたりで使う寝室だということがわかった。