不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


 目にした瞬間、見てはいけないものを見てしまったような気持ちに襲われる。

 まるで見なかったように抜き足差し足で寝室から出、音を立てないように扉を閉めた。

 自分ひとりで見て回っていてよかったと内心ホッとしてしまう。

 桜坂社長と共に部屋を見て回っていたら、この寝室を目の前にしてどんなリアクションを取ったらいいのか全く未知だった。

 笑って誤魔化すにしても無理があるし、恥ずかしがるのも筋違いだ。

 でも、ここに本当に住むということになってくると、あのベッドで寝起きを共にするということになるの……?

 そんなこと、私には想像もできなければハードルが高すぎる。

 ひとり混乱したのを隠してリビングへと戻ると、桜坂社長はこの間と同じように大パノラマの広がるガラス窓から東京の街を眺めていた。


「すみません、拝見してきました」


 声を掛けると、桜坂社長はゆっくりと振り返る。


「特に問題はなかったか」

「あ、はい、特には……」


 そう答えつつ、ちらりと今見た寝室が頭をよぎる。

 しかし、もちろんそれは口にしないで胸の奥に封印した。

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