不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


「何も謝るようなことはひとつもないだろ」


 言われてみれば事あるごとに、『すみません』と言ってしまっている気がしないでもない。

 恐縮しているから、ついつい無意識に謝ってしまうのかもしれないけど……。


「そうかも、しれないんですけど、つい……すみません、あっ!」


 また『すみません』と出てしまい、慌てて手で口元を押さえる。

 私のそんな様子を見て、桜坂社長はフッと唇に笑みを浮かべる。

 これまで笑みらしい笑みを見たことがなかったから、不意打ちなそんな表情に釘付けになってしまった。


 こんな風に、笑ったりするんだ……。


「そんなに身構えなくていい。これから生活を共にするのに、それでは疲れてしまうだろう?」

「はい……」


 桜坂社長の言う通り、本当にこれからここでふたりきりの生活が始まるとするならば、私は常に緊張を強いられて早々に参ってしまいそうだ。

 だからと言って、そう簡単に彼といることに慣れるのは難しいと思える。

 着々と進んでいる新生活への準備に、現段階では私の心は全く追い付いていなかった。

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