不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
コーディネートされた部屋を見るという目的を達成すると、実家まで送り届けてもらうことになった。
もう道を案内することも必要なくなったため、車内は沈黙に包まれる。
無言というのも妙に落ち着かず、だからといって自分から何か話題を出せる勇気もない。
ひたすら窓の外を眺めたり、自分の手元に視線を落としたり、なるべくリラックスしているような空気を醸し出す努力をしていた。
「そういえば、今日会っていたのは付き合っている相手か」
桜坂社長のほうから沈黙を破ったかと思えば、訊かれたその内容に驚かされる。
「えっ、ち、違います! 付き合ってるなんてまさか……高校時代の友人です」
嘘偽りのないことを言っているはずなのに、まるで嘘をついているかのように心拍が上がっていく。
「それに、食事はあとふたり、男女の友達も一緒で、四人でだったんです。さっきは、帰りの路線が同じ友達と、たまたまふたりで帰っていたというだけで……」
説明すればするほど、なんだか言い訳をしているように聞こえてくる。
それでも黙るわけにはいかずありのままを話すと、桜坂社長は「そうか」とだけ短く反応を示した。