不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
桜坂社長は私に対して若さという部分でそんなことを思うのかもしれないけど、それは全くの見当違い。
私に結婚するにあたって隠さなくてはならないような相手はいないからだ。
私よりもむしろ、桜坂社長のほうがそういった相手がいるのではないだろうか。
『みかど堂』の代表取締役で、まだ若く、そしてメディアも注目する容姿端麗な人だ。
絶対に恋人がいないはずもない。
私に人間関係を整理する必要はないと言うのは、自分もそのつもりなのだろうと納得がいった。
「あの……」
「なんだ」
「嫌では、ないんですか? そういうの……」
色々考えていたら、つい思っていたことを口に出してしまっていた。
ハッとしたものの、時すでに遅し……。
ばっと顔を向けて見た桜坂社長の運転する横顔は、やはり相変わらず特に大きな変化は見られない。
まずいことを言ってしまったと後悔し始めた時、小さく息をつくのが聞こえた。
「この婚姻には、そういう感情を持ち合わすことではないと思っている」
抑揚のない声は、迷いもなくそう言い放った。