不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


 ひとりきりになったマンションの部屋の中、改めて室内を見て回っていく。

 解放感のあるリビングダイニングに、広々としたキッチン。

 マンションと一口に言っても、ここは最高グレードの部類に入るに違いない。

 贅沢極まりない新居に、未だこれからここで寝起きをして暮らしていくことが実感できないでいる。

 メインのリビングダイニングの他、部屋は三つ。

 さっき荷物を運びこんだ私が自由に使っていいという部屋と、桜坂社長の書斎、そして寝室だ。

 桜坂社長が不在なのをいいことに、そっと彼の書斎に入ってみる。

 きちんと整えられたモノトーンのシックな室内は、すでにデスクにパソコン機器が設置されるなど、すぐにでも仕事のできるような設備が整えられていた。

 そろりとドアを閉め、最後に今日はまだ開けていないドアへと近づく。

 ノブに手をかけそっと押し開けると、奥に見えるキングサイズのベッドにひとりでに鼓動が音を立て始めてしまった。

< 39 / 135 >

この作品をシェア

pagetop