不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
「……可哀想に」
ポツリと、聞き逃してしまいそうなほど小さな呟きだった。
え……?
可哀想――そのフレーズに、一体どういう意味だろうと思わず目を開きそうになる。
瞼がひくひく動きそうになって、とにかく気持ちを落ち着けるのに集中する。
そのうちに髪から触れる感触が離れていき、ベッドから気配が遠のいていくのを感じ取った。
ドアが閉まった音を確認してから、警戒しつつもそっと目を開く。
広い寝室には私ひとりだけで、肘を立ててゆっくりと上体を起こした。
『……可哀想に』
その言葉の意味は分からないけれど、聞いてはいけないものを聞いてしまったような、そんな気分に追い立てられる。
可哀想って、どういう意味だろう……?
あの言い方は、私が可哀想……ってこと、だよね……?
もやもやと心に暗雲のようなものが広がっていく。
ほろ酔いと心地よかった眠りから一気に覚め、しばらくベッドの上から動けずにいた。