不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
「すみません、私、普段通りに用意してしまって……何がお好きかも聞いていないのに」
「普段通り? 実家にいたころ料理をしてたのか?」
「はい。母が仕事後に父のところに行くことが多いので、私が代わりに作るようにしていて。でも、大したものは全然作れません」
私の話を黙って聞いた千晶さんは、箸置きの箸を手に取る。そして丁寧に「いただきます」と言い、肉包み蓮根の天ぷらを箸でつまんだ。
「……肉を挟んだ蓮根の天ぷらか」
「あ、はい。お嫌いでしたか?」
「いや、むしろ好きだ」
そう言った千晶さんは天ぷらを口にする。
「うん……」と小さく頷くと私に目を向け「美味い」と言ってくれた。
「良かった……あっ、ご飯持ってきますね」
まだ炊き込みご飯をよそってきてないことに気付き、席につこうとしていたところをキッチンへと向かう。
箸を進めてくれているのをご飯をよそいながら目にし、『食べてもらえた……!』とホッと胸をなでおろしていた。