不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


 ぴんと体を伸ばしたまま、天井を見つめながら固まる。

 となりに横になった千晶さんからはなんのアクションもなく、これは一体どういうことなのだろうかと恐る恐る顔を横に向けた。

 目にした千晶さんは仰向けで天井に顔を向け、目を閉じまるで眠ってしまったような顔をしている。

 真横から見ると、鼻筋が通った美しい横顔にどきりとする。

 伏せた目元の睫毛も実は長いのだと発見してしまった。


「あっ」


 盗み見たことも忘れてじっと観察していると、急に千晶さんの目が開き、ばちりと至近距離で視線が重なり合う。

 驚いて声を漏らした私に、千晶さんは微笑を浮かべてみせた。


「どうした、寝ないのか」

「え、あっ、はい、寝ます!」


 ばっと天井へと向き直り、ぎゅっと目をつむる。

 となりからフッと笑ったような気配を感じた。

 ひとりで勝手に大きな勘違いをしていたようで、急激に羞恥が押し寄せる。

 目を閉じたまま手探りでシーツを引き寄せ、顔の半分まで潜り込んだ。

 寝室が一緒で一つのベッドだからって、絶対に何かが起こるわけじゃない。

 そもそも、許婚という形で表向きの夫婦というだけ。

 千晶さんが私に手を出そうなんて気にもなるはずない。

 それなのに、私は何をひとりで意識して……。

 前髪の上に手が置かれて、優しくよしよしと撫でられる。


 ほら……私は、千晶さんにとって年下の、そういうことには対象外の女。


 あやすような、宥めるような触れ方に、何故だか胸がぐっと圧迫されたような感覚を覚えた。

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