不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


 スクランブルエッグと炙りベーコン、サラダはベビーリーフとラディッシュを添えてトーストのワンプレートにする。そこにヨーグルトといちごをあえたカップを載せて完成だ。


「……え、かったい」


 買っておいたマーマレードジャムの瓶を開けようと蓋を捻ってみるものの、びくともしない。

 ひとり唸りながら格闘していると、いきなり背後から開けようとしているジャムの瓶をひょいと取り上げられた。


「あっ……」


 いつの間にか帰宅していたらしい千晶さんがそこには立っていて、私から取り上げた瓶の中身を見つめている。

 黙って蓋を捻ると、「カコッ」と軽やかな音が聞こえた。


「あ、ありがとうございます……」


 特に何も言うことなく、千晶さんは微笑を浮かべるだけで開けた瓶を差し出す。

 困っているところを察して、スマートに手助けしてくれるところに、自然とときめいてしまった。

 走りに行くと言っていた千晶さんは、黒ずくめのスタイリッシュなトレーニングウェアを身にまとっている。

< 80 / 135 >

この作品をシェア

pagetop