不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


「おかえりなさい。すみません、起きられたこと、全く気付かずで……」

「よく眠れたか」

「はい。爆睡だったみたいです」


 へへへっと照れ笑いで誤魔化してみる。

 昨日は緊張で絶対に寝付けないなんて思っていたのに、気付けばしっかり熟睡をしていて自分に呆れる。


 私はそんな状態だったけど、千晶さんはどうだったんだろう……?


「シャワーを浴びてくる」

「あ、はい。じゃあ、食事の準備をしてますね」


 相変わらず私とは正反対で、千晶さんに変わった様子は見られない。

「すぐに出る」とだけ言い残し、リビングを出ていってしまった。


 やっぱり、こんなにいろいろ考えて意識してるのは私のほうだけってこと、だよね……。


 そんなことをぼんやりと考えながら、トーストを焼く頃合いを窺い、コーヒーを淹れる用意をする。

 しばらくしてシャワーから出てきた千晶さんは、グレーのシャツにモノトーンストライプのネクタイを締めながらリビングに現れた。

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