不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


 十二時半をまわったあたりで、千晶さんからメッセージが入ってきた。

 迎えが来てくれるということで、マンションのエントランスホールに向かうと、千晶さんの秘書の方が車を用意して迎えに来てくれていた。

 マンションから車で数十分……到着したのは、東京駅からほど近い老舗高級ホテルだった。

 ガラスのエントランスを通り抜けていくと、広いロビーラウンジが来訪者を迎える。

 天井の高いロビーラウンジは、建物の中にいるというのに解放感があり、思わず深呼吸をしたくなった。

 その中央にある季節のフラワーアレンジメントは初夏を感じさせる力強い青々とした作品で、訪れた人の目を必ずひくであろう生命力を感じさせる作品だった。

 千晶さんはロビーラウンジの一角でタブレット端末を眺めていた。

 私が到着したのを見つけると、手元を止めて腰を上げる。


「お連れしました」

「ありがとう、悪かったな」


 秘書の方は「いえ」と言うと、一礼してその場を立ち去っていく。

 ふたりきりになり、途端に緊張が押し寄せた。

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