不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


「それなら、誘ってみて正解だったな。飽きるまで食べるといい」

「飽きるまでなんて、贅沢ですね」


 緊張を押し込めて、なんとか平静を装って答える。

 でも、この抱くようにして背中に回された千晶さんの手に落ち着けない。


「桜坂社長、お待ちしておりました」


 連れていかれたホテル一階のレストランには、すでに黒服のスタッフが待機していて、千晶さんの顔を見るとすかさず挨拶をして迎え入れる。

 そういえば招待されていると聞いているけど……なんて思っているうち、通常は出てこないであろうコック服の男性が奥から出てきて、「お久しぶりです」なんて千晶さんと挨拶を交わし始めた。


「奥様、いつもお世話になっております。料理長の益田と申します。本日はお越しいただきありがとうございます」


 千晶さんとレストランのスタッフが話すのを後方で待っていると、コック服の男性が私へと声をかけてくる。

〝奥様〟なんて言われ、どきりと鼓動が跳ねた。


「お口に合うといいのですが、どうぞお楽しみになってください」

「はい、ありがとうございます」


 丁寧に挨拶をされ、恐縮してしまう。

 ぺこりと頭を下げると、千晶さんが「行こうか」と私の手を取った。

 スタッフに先導され、レストラン内を案内されていく。

 ホテル中庭に面したレストラン内は高い天井と広い窓から陽の光を取り込める明るい空間で、白を基調としたインテリアが眩しい。

 テーブルの中央には、赤を基調とした可愛らしいフラワーアレンジメントが飾られている。

 フロア内はスイーツブッフェを楽しむ人々が多く席についていて、甘い香りがふわりと漂っていた。

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