不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
へ……? 今、なんて?
ぱちぱちと瞬きを繰り返す。
新居、法的な手続き、婚儀……。
聞き間違いではないかと思えるフレーズがポンポンと飛び出してきた。
さすがに声を出さずにはいられなくなって、「ちょっと待ってください!」と運転をする横顔に向かって身を乗り出す。
「どういうことですか? 私にはなんのことだか……」
「なんのこと、か……まぁ、無理もないな」
「……?」
「ところで、お父様の具合はどうだ。安定しているとは聞いているが」
「え……?」
「本当はもっと早くに迎えに来て、婚姻の話を進めるべきだったと思っていた。無駄に心臓への負担をかけてしまったかもしれない」
桜坂社長は父親が心臓疾患だとすでに知っている口ぶりでそんなことを言う。
しかし、私の耳が反応したのはそこではない。
婚姻の話――。
その部分にまた身を乗り出すようにして運転席に体を向けた。