不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
ドア越しに一言声をかけて行くだけのつもりでいたのに、突如目の前に千晶さんが現れて固まってしまう。
「あ……お仕事中に、すみません。お先に、失礼します」
なんだか仕事上がりのような挨拶になってしまったと思いながらぺこっと頭を下げる。
「寝るのか」
「あ、はい。おやすみなさい」
もう一度ぺこりとし、ドア前をあとにする。
ベッドルームのドアノブに手をかけたところで、私のあとに千晶さんがやって来ていることに気が付いた。
「え……」
ノブに手を置いたまま静止した私を室内へ促すように、そっと背中に手を添える。
「あ、あの」
「眠るんだろ?」
昨晩と同じように私をベッドまで連れていくと、照明を点け、反対側へとまわる。
ベッドの縁に腰かけたままの私へ「どうした?」と言いながら先にベッドの上へと脚を上げた。
「あ、いえ……お仕事中なのでは……?」
「ああ、お前が眠るなら中断だ」
「え、でも……私のことは気にせず、お仕事に戻られても――」
私の声を遮るように伸びてきた手に捕まり、強引に引っ張り上げられる。
あっという間にベッドの中へと引き込まれ、近づいた千晶さんを驚きの眼差しで
見上げた。
間近で目が合うと、私の心臓はたちまち音を立て始める。