不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
「千晶さんがこうして私に触れるのは、すべて人目に……いい夫婦と、映るようにだけのためなんですよね」
目の前にいる千晶さんがどんな顔をして私を見ているのかは、怖くてとても確認できない。
もしかしたら、切れ長の目が鋭く私を射抜いているのかもしれない。
それでも、一度言い出してしまった私の言葉は止まらない。
「わかってるのに、だめですね……なんか、虚しい気持ちになって」
こんなことを言って何になるのか。
ただ千晶さんを不快にさせるだけのことだってわかっているのに、抑えられない私はやっぱり子どもなのだとうんざりする。
胸の内を口に出せば出すほど自分を追い詰めていることに気付き、もうやめてと自分に制御をかけた。
「……でももう、割り切ります」
今ある自分の気持ちを口に出してみて、この複雑な気持ちの正体に気付いてしまった。
千晶さんの気持ちが、欲しい――。
遥か遠い世界の人だったのに、そばにいることでいつしかもっと近付けたらと思うようになってしまっていた。
だからこそ、気持ちの通っていない彼の行為が虚しい。
でもそれは、どうしたって仕方のないこと。
私たちは、許婚という関係で引き合わされただけで、千晶さんはこの結婚は本意ではないと言っていて……。
「目を開けるんだ」