不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
現実から目を背けるように閉じた瞼に、千晶さんの指が触れる。
導かれるようにそっと薄目を開けて、目前で視線が重なり合った。
冷たい眼差しに見つめられていると思っていた。
それなのに、私を見る千晶さんの目はそれとは違う。
どこか熱を宿した瞳の奥に、思わずドクッと心臓が驚いた音を上げた。
「割り切ると……そう言ったな?」
千晶さんの声を聴きながら、どきん、どきんと全身で鼓動を感じる。
逸らされない彼の目に吸い込まれそうで、無意識に息を止めていた。
「それなら……遠慮なく」
そう言った言葉尻は唇を震わせるほど近く、息を呑む間もなかった。
強引で噛み付くような、でもどこか甘さを秘めたキス。
塞がれた唇からは、不意をつかれた私の吐息が漏れる。
「っ、っん……っ」
わずかな隙間をぬって舌が口内に侵入してくると、びくんと肩が揺れてしまう。
いつの間にか両手はベッドに縫いつけられるように、千晶さんの大きな手に抑えられていた。
血が沸騰しているのかと思えるくらい体が熱い。
「すまない……」
どうしたらいいのかもわからず身を任せる私に、唇を離した千晶さんは額を合わせ小さくため息を漏らす。
謝罪の言葉を置くと、静かに部屋を出ていった。