不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
立ち込める暗雲
京都の本店を拠点とし、全国に店舗を展開、近年は様々な業界とも提携をし、みかど堂は業績を伸ばしている。
今年は業界としては異例のタッグを老舗高級旅館と組み、新たな事業拡大を図ろうとしている。
その新事業を記念したパーティーが、今晩都内ホテルで予定されているのだ。
仕事が終わり次第、タクシーに乗り込み現地に向かう。
千晶さんには迎えを寄越すと言われたけれど、自分で行けるので大丈夫だと遠慮した。
車窓から流れる街の景色を眺めながら、気持ちを落ち着けるようにゆっくりと息を吐きだす。
気を抜くと、あの晩のことが簡単に蘇る。
思い出すだけで心拍数が上がり、体が熱くなる。
そんな状態があの夜からずっと続いているのだ。
それなのに、千晶さんは相変わらず……。
何事もなかったように私とも接してくるし、もちろんあの時のことに触れることもない。
意識しているのは、やっぱり私ひとりだけで……。
それに加えて、ここのところ千晶さんは仕事が忙しくあまり時間が合わない。
京都の本店のほうに行く機会も多く、帰宅しない日もあるくらいだ。
これまでのように一緒に過ごす時間が一時的にでも減っていることは、今の私としては助かっている。
とはいっても、いつまでもそんな風にはいかないわけで……。