Overflow~とある高校生たちの恋愛事情~
スカレタイ。【裏川×表】
(Side:裏川)
僕は裏川唯影。
ブサイクでクズな日陰者。
こんな俺でも好きな人がいる。
表光。可愛く明るく性格も良い、クラスのアイドルだ。
小学生の頃から同じ学校で、何度か同じクラスになっているが、ほとんどまともに話したことがない。
高校生になって久しぶりに同じクラスになったが、それでもなお話していない。
僕なんかとの会話に価値はないから当たり前だ。
俺は表さんに、控えめに言って嫌われている。
さっき授業中に消しゴムを落としてしまい、拾おうと手を伸ばすと、隣の席の表さんと手が当たった。
多分拾おうとしてくれたのだろう。
手が触れた瞬間、表さんはものすごいスピードで手を引っ込めた。
「ご、ごめん。裏川くん。」
「ぼ、僕こそごめん。」
表さんはそれだけ言って目も合わせてくれなかった。
これは嫌われていると言っても過言ではないだろう。
俺のような日陰者の恋なんざこんなものだと、メソポタミア文明の頃から相場が決まっている。
今さら悲しむことではない。
昼休み、教室で僕の唯一の友人である前沢にこのことを話した。
ちなみに前沢は俺が表さんのことが好きであることを知っている。
「裏川お前さ、そのネガティブ思考やめた方がいいぞ。別に顔も悪くないっていうかむしろイケてる部類だし、性格だって良い奴なのにネガティブ思考が全部チャラにしてんじゃん。」
「お前、眼科行った方がいいんじゃないか?」
「おうてめえぶっ飛ばすぞ。」
前沢は小さくため息をついた。
「どうしてお前はこうも自分の勘違いを真実として曲げねえんだ。」
「勘違いなものか。目も合わせてくれなかったんだぞ。心の中では、こいつキモイな死ねばいいのに、くらい絶対言ってるだろ。」
「それが勘違いだって。例えば、照れて目が合わせられなかったって考えはできないか?」
「それは無いね。だって相手は僕だぞ。照れる要素なんてないじゃないか。」
「そこからか...。」
前沢は天を仰いだ。
「じゃあ諦めるのか?」
「それは...」
「もたもたしてると他の男に取られるぞ。表さんを狙ってるやつ多いんだから。」
「別にいいよ。僕より良い男子なんて山のようにいる。表さんが幸せになるなら、それでいい。」
「良い奴のセリフなんだけどひねくれた自己犠牲が凄すぎて何も良く聞こえないことってあるんだな。」
「どういうことだよ。」
「そのままだよ。ひねくれ自己犠牲野郎。」
もういいよ、と言って前沢は自分の席に帰って行った。
好きな人の幸せを願うことの何がいけないのだろうか。
僕にはわからない。
(Side:表)
「ねーねー!佐野ちゃん聞いてよー!裏川君と手触れちゃった!きゃああああああああ!」
「あ、ああ、そう、おめでとう。」
「しかも会話できたんだよー!」
「何話したの?」
「ごめん。僕もごめん。って!」
「私の中の会話の概念が変わりそうなんだけど。」
「これはもうアレだよアレ!」
「何?」
「結婚だよ!」
「健全なるお付き合いをすっ飛ばすな。」
「もう裏川君かっこいいし優しいし真面目だし、マジで王子様!」
「うーん、私はわからないんだけどね。光は裏川くんの何が好きなの?」
「概念。」
「は?」
「浦川君という概念が好き。」
「何か変な宗教入ってる?」
「入ってないよー!」
(Side:前沢佐野)
その日の夜、前沢と佐野のLINE。
「で、裏川君はどうだった?」
「全然。あいつの思考回路がネックだよな。表さんは?」
「案の定平常運転のぶっ飛びポジティブ。」
「あの人のポジティブさもなかなか問題かもな。」
「確かに。にしてもなんで真逆の2人が両片想いになっちゃうのかな。」
「恋は盲目ってやつじゃね。」
「前沢が恋を語るなんて、明日バビロニアの宝物庫の中身降ってくるんじゃない?」
「勝手に英雄王を召喚すな。」
「まああそこがくっつくのはまだ時間がかかりそうね。」
「そうだな。それを傍から見てるのもなかなか面白いけど。」
「前沢性格悪ーい。」
「佐野だって同じだろ。」
「確かに。じゃあお風呂入ってくるから。また明日。Hな妄想するんじゃないわよ。」
「するかよ自惚れんな。また明日。」
(Side:裏川)
前沢が言っていたことが気になって眠れない。
「ひねくれ自己犠牲野郎」
確かに僕はネガティブだし、ひねくれている自覚が無くはない。
だが、自己犠牲野郎というのがわからない。
僕は表さんのことが好きだから、表さんがより幸せになる方を選んで欲しいだけなのに。
胸の奥がズキリと痛む。
そういえば昼休みもこんな感覚になった気がする。
この痛みが犠牲なのかもしれない。
表さんが幸せになるならそれでいい。
そう考える度にこの痛みは着いてきていた。
僕はその度に、人の幸せを心から願えないなんて、なんて自己中心的なクソ野郎なんだ、と嫌悪感を感じていた。
違うのか?
これが普通なのか?
相手の幸せを考えず、自分のものにしたい、独り占めしたいという感情になることは、正しいことなのか?
僕が人としてバグってるわけじゃないのか?
そうなのかもしれない。
表光さん。
僕はあなたを僕のものにしたい。
僕はあなたを独り占めしたい。
僕はあなたに...
「好かれたい。」
僕は裏川唯影。
ブサイクでクズな日陰者。
こんな俺でも好きな人がいる。
表光。可愛く明るく性格も良い、クラスのアイドルだ。
小学生の頃から同じ学校で、何度か同じクラスになっているが、ほとんどまともに話したことがない。
高校生になって久しぶりに同じクラスになったが、それでもなお話していない。
僕なんかとの会話に価値はないから当たり前だ。
俺は表さんに、控えめに言って嫌われている。
さっき授業中に消しゴムを落としてしまい、拾おうと手を伸ばすと、隣の席の表さんと手が当たった。
多分拾おうとしてくれたのだろう。
手が触れた瞬間、表さんはものすごいスピードで手を引っ込めた。
「ご、ごめん。裏川くん。」
「ぼ、僕こそごめん。」
表さんはそれだけ言って目も合わせてくれなかった。
これは嫌われていると言っても過言ではないだろう。
俺のような日陰者の恋なんざこんなものだと、メソポタミア文明の頃から相場が決まっている。
今さら悲しむことではない。
昼休み、教室で僕の唯一の友人である前沢にこのことを話した。
ちなみに前沢は俺が表さんのことが好きであることを知っている。
「裏川お前さ、そのネガティブ思考やめた方がいいぞ。別に顔も悪くないっていうかむしろイケてる部類だし、性格だって良い奴なのにネガティブ思考が全部チャラにしてんじゃん。」
「お前、眼科行った方がいいんじゃないか?」
「おうてめえぶっ飛ばすぞ。」
前沢は小さくため息をついた。
「どうしてお前はこうも自分の勘違いを真実として曲げねえんだ。」
「勘違いなものか。目も合わせてくれなかったんだぞ。心の中では、こいつキモイな死ねばいいのに、くらい絶対言ってるだろ。」
「それが勘違いだって。例えば、照れて目が合わせられなかったって考えはできないか?」
「それは無いね。だって相手は僕だぞ。照れる要素なんてないじゃないか。」
「そこからか...。」
前沢は天を仰いだ。
「じゃあ諦めるのか?」
「それは...」
「もたもたしてると他の男に取られるぞ。表さんを狙ってるやつ多いんだから。」
「別にいいよ。僕より良い男子なんて山のようにいる。表さんが幸せになるなら、それでいい。」
「良い奴のセリフなんだけどひねくれた自己犠牲が凄すぎて何も良く聞こえないことってあるんだな。」
「どういうことだよ。」
「そのままだよ。ひねくれ自己犠牲野郎。」
もういいよ、と言って前沢は自分の席に帰って行った。
好きな人の幸せを願うことの何がいけないのだろうか。
僕にはわからない。
(Side:表)
「ねーねー!佐野ちゃん聞いてよー!裏川君と手触れちゃった!きゃああああああああ!」
「あ、ああ、そう、おめでとう。」
「しかも会話できたんだよー!」
「何話したの?」
「ごめん。僕もごめん。って!」
「私の中の会話の概念が変わりそうなんだけど。」
「これはもうアレだよアレ!」
「何?」
「結婚だよ!」
「健全なるお付き合いをすっ飛ばすな。」
「もう裏川君かっこいいし優しいし真面目だし、マジで王子様!」
「うーん、私はわからないんだけどね。光は裏川くんの何が好きなの?」
「概念。」
「は?」
「浦川君という概念が好き。」
「何か変な宗教入ってる?」
「入ってないよー!」
(Side:前沢佐野)
その日の夜、前沢と佐野のLINE。
「で、裏川君はどうだった?」
「全然。あいつの思考回路がネックだよな。表さんは?」
「案の定平常運転のぶっ飛びポジティブ。」
「あの人のポジティブさもなかなか問題かもな。」
「確かに。にしてもなんで真逆の2人が両片想いになっちゃうのかな。」
「恋は盲目ってやつじゃね。」
「前沢が恋を語るなんて、明日バビロニアの宝物庫の中身降ってくるんじゃない?」
「勝手に英雄王を召喚すな。」
「まああそこがくっつくのはまだ時間がかかりそうね。」
「そうだな。それを傍から見てるのもなかなか面白いけど。」
「前沢性格悪ーい。」
「佐野だって同じだろ。」
「確かに。じゃあお風呂入ってくるから。また明日。Hな妄想するんじゃないわよ。」
「するかよ自惚れんな。また明日。」
(Side:裏川)
前沢が言っていたことが気になって眠れない。
「ひねくれ自己犠牲野郎」
確かに僕はネガティブだし、ひねくれている自覚が無くはない。
だが、自己犠牲野郎というのがわからない。
僕は表さんのことが好きだから、表さんがより幸せになる方を選んで欲しいだけなのに。
胸の奥がズキリと痛む。
そういえば昼休みもこんな感覚になった気がする。
この痛みが犠牲なのかもしれない。
表さんが幸せになるならそれでいい。
そう考える度にこの痛みは着いてきていた。
僕はその度に、人の幸せを心から願えないなんて、なんて自己中心的なクソ野郎なんだ、と嫌悪感を感じていた。
違うのか?
これが普通なのか?
相手の幸せを考えず、自分のものにしたい、独り占めしたいという感情になることは、正しいことなのか?
僕が人としてバグってるわけじゃないのか?
そうなのかもしれない。
表光さん。
僕はあなたを僕のものにしたい。
僕はあなたを独り占めしたい。
僕はあなたに...
「好かれたい。」