Overflow~とある高校生たちの恋愛事情~
かわいいひと。【亀山×白田】
「恋などバカバカしい。」
会計の赤城さんが帰り、生徒会長の亀山さんが呟く。
会長は勉強のみを武器に生徒のトップに登り詰めた、いわば努力の鬼。
恋愛などしてこなかったのも頷ける。
「恋は良いものですよ。恋は人を成長させます。」
知ったように言ってみたが、私も恋愛はしたことが無い。
男というのは、いつも子どもでどうもみんなのように恋愛的な感情を抱くことができない。
「それよりも会長。さっきの私と赤城さんの会話、聞いていたのですか?」
「仕方ないだろ。いくら俺でも今日の赤城が何かおかしいことくらいはわかった。同じ生徒会役員として気になるのは当然だ。」
「気づいていたのなら、なぜ声をかけて差し上げなかったのです。」
「それは、あれだ、俺が声をかけてはいけない事情があるかもしれないだろう。」
「そんなものありますか?」
「あるとも。実際は違ったようだが。」
「例えば?」
なんとなく察しはついている。
これはちょっとした悪戯だ。
「...赤飯。」
「せきはん?」
予想外の答え方だ。
確かにあの日が初めて来たら赤飯を炊くという風習はあるが、あれは全滅器具の風習なのでは?
「そうだ。赤飯だ。それでわかるだろう。」
勝ち誇った顔をする会長。
そんな顔されたら、もっと虐めたくなっちゃうじゃないですか...。
「わかりませんね。なぜお赤飯が聞いてはいけない事情なのですか?」
「白田、お前は察するということができないのか。」
「察するもなにも、お赤飯がなぜ聞いてはいけないのかわからないのです。会長は何かお赤飯にやましいことでもおありですか?」
会長の顔が徐々に強ばる。
追い詰められている証拠だ。
ああ、その顔が見たかった。
「やましいことなどはないが、それを口に出すのははばかられる。俺も一応男だからな。」
「とはいえ私はさっぱりなのですが、教えてくださいませんか?」
「断る。赤城に言えないのに白田にも言えるか。」
ここで一芝居打ってやる。
「そうですか、会長は私を信じてくださらないのですね。」
「え、いや、そういうわけではなくてだな」
「いいえ、そういうことです。副会長である私とは生徒会の中でも最も長い時間行動を共にし、信頼関係ができていると思っていたのですが、私の勘違いだったようです。」
ちらりと会長の方を見る。
一見ポーカーフェイスのように見えるが、非常に困っている。
「そんなわけないだろ。俺は誰より信頼しているから副会長に白田を選んだし、今はもっと信頼している。」
あら、サラッと嬉しいことを言ってくださるじゃない。
このまま告白でもしてくれたら、それも一興だと思うのだけど。
「言うだけなら誰でも言えます。ましてやいつも無表情な会長に言われても、本心かどうかわかりません。」
「じゃあ行動で示せばいいのか。」
そう言うと会長は立ち上がり、私の後ろに立ち止まった。
何が起きるのかわからないが、流石にバックハグとか愛の言葉を囁くとか、そういうことはないだろう。
会長、チキンですから。
フラグは1秒も経たずに回収された。
私は会長に後ろから抱きしめられた。
予想外の展開に呆然としていると、会長が耳元で囁く。
「白田、俺はお前がいないとダメだ。お前は特別だ。」
まさかの反撃に私は硬直してしまった。
会長の腕はまだ私を優しく包み込んでいる。
普段からこれくらい積極的だったらいいのに。
「あっ」
生徒会室の入口から声がした。
そういえばドア開けっ放しだったかも。
見ると生徒会書記で唯一の2年生、岩崎君が顔を真っ赤にして立っていた。
「ご、ごゆっくりー」
そう言うと岩崎君はドアを閉めて足早に帰って行った。
会長が焦って岩崎君を追いかける。
「待て、岩崎!誤解だ!おい!岩崎!」
誤解、か。
ちょっと嬉しかったんだけどな。
でも、そういうところも...。
「可愛い人。」
会計の赤城さんが帰り、生徒会長の亀山さんが呟く。
会長は勉強のみを武器に生徒のトップに登り詰めた、いわば努力の鬼。
恋愛などしてこなかったのも頷ける。
「恋は良いものですよ。恋は人を成長させます。」
知ったように言ってみたが、私も恋愛はしたことが無い。
男というのは、いつも子どもでどうもみんなのように恋愛的な感情を抱くことができない。
「それよりも会長。さっきの私と赤城さんの会話、聞いていたのですか?」
「仕方ないだろ。いくら俺でも今日の赤城が何かおかしいことくらいはわかった。同じ生徒会役員として気になるのは当然だ。」
「気づいていたのなら、なぜ声をかけて差し上げなかったのです。」
「それは、あれだ、俺が声をかけてはいけない事情があるかもしれないだろう。」
「そんなものありますか?」
「あるとも。実際は違ったようだが。」
「例えば?」
なんとなく察しはついている。
これはちょっとした悪戯だ。
「...赤飯。」
「せきはん?」
予想外の答え方だ。
確かにあの日が初めて来たら赤飯を炊くという風習はあるが、あれは全滅器具の風習なのでは?
「そうだ。赤飯だ。それでわかるだろう。」
勝ち誇った顔をする会長。
そんな顔されたら、もっと虐めたくなっちゃうじゃないですか...。
「わかりませんね。なぜお赤飯が聞いてはいけない事情なのですか?」
「白田、お前は察するということができないのか。」
「察するもなにも、お赤飯がなぜ聞いてはいけないのかわからないのです。会長は何かお赤飯にやましいことでもおありですか?」
会長の顔が徐々に強ばる。
追い詰められている証拠だ。
ああ、その顔が見たかった。
「やましいことなどはないが、それを口に出すのははばかられる。俺も一応男だからな。」
「とはいえ私はさっぱりなのですが、教えてくださいませんか?」
「断る。赤城に言えないのに白田にも言えるか。」
ここで一芝居打ってやる。
「そうですか、会長は私を信じてくださらないのですね。」
「え、いや、そういうわけではなくてだな」
「いいえ、そういうことです。副会長である私とは生徒会の中でも最も長い時間行動を共にし、信頼関係ができていると思っていたのですが、私の勘違いだったようです。」
ちらりと会長の方を見る。
一見ポーカーフェイスのように見えるが、非常に困っている。
「そんなわけないだろ。俺は誰より信頼しているから副会長に白田を選んだし、今はもっと信頼している。」
あら、サラッと嬉しいことを言ってくださるじゃない。
このまま告白でもしてくれたら、それも一興だと思うのだけど。
「言うだけなら誰でも言えます。ましてやいつも無表情な会長に言われても、本心かどうかわかりません。」
「じゃあ行動で示せばいいのか。」
そう言うと会長は立ち上がり、私の後ろに立ち止まった。
何が起きるのかわからないが、流石にバックハグとか愛の言葉を囁くとか、そういうことはないだろう。
会長、チキンですから。
フラグは1秒も経たずに回収された。
私は会長に後ろから抱きしめられた。
予想外の展開に呆然としていると、会長が耳元で囁く。
「白田、俺はお前がいないとダメだ。お前は特別だ。」
まさかの反撃に私は硬直してしまった。
会長の腕はまだ私を優しく包み込んでいる。
普段からこれくらい積極的だったらいいのに。
「あっ」
生徒会室の入口から声がした。
そういえばドア開けっ放しだったかも。
見ると生徒会書記で唯一の2年生、岩崎君が顔を真っ赤にして立っていた。
「ご、ごゆっくりー」
そう言うと岩崎君はドアを閉めて足早に帰って行った。
会長が焦って岩崎君を追いかける。
「待て、岩崎!誤解だ!おい!岩崎!」
誤解、か。
ちょっと嬉しかったんだけどな。
でも、そういうところも...。
「可愛い人。」