Overflow~とある高校生たちの恋愛事情~
諦めないから。【手嶋×相田】
僕、手嶋恭介が顧問を務める吹奏楽部には少し困った女子生徒がいる。
「ダーリンおはよ!」
朝から僕の方に走ってきてハイテンションで挨拶をするこの生徒が問題児、相田心美。
うちの高校の2年生だ。
「おはよう。先生をそんな呼び方するんじゃないぞ。」
「えー、いつも呼ばせてくれるじゃないですかー。夢の中で!」
「夢と現実の区別くらいつけなさい。」
「はーい。」
「ほら、早く教室に行かないと遅刻なるぞ。」
「あ!ほんとだ!じゃあね、ダーリン!」
相田は下手くそな投げキッスをして教室に走って行った。
相田は僕のことが好きらしい。
先生として好きなのであればこれほど嬉しいことは無いが、相田は違う。
異性として好きらしい。
嬉しくないかと言われると正直悪い気はしない。
しかし正しいことではないのは明確だ。
だから彼女には諦めてもらわなければならない。
最悪、僕の教師人生が終わるかもしれないのだから。
日中の授業が全て終わり、音楽室には吹奏楽部の部員達が続々とやってくる。
部員が全員集まるとミーティングを行い、各々練習に向かう。
今日は各教室で楽器毎に別れて練習だ。
こういう時、僕は各教室を廻って練習を見てやるようにしている。
クラリネットの教室に着くとヤツの声が響く。
「ダーリンだ!待ってたよー!!!」
「だからその呼び方やめろ。1年生がマネするだろ。」
「なんで?私以外に先生のことダーリンって呼ばせないよ?それともまさか、浮気...」
「ちげーよ。ってか浮気も何も付き合ってすらないだろ。」
「私とは遊びだったのね。あんなに愛し合ったのに。」
「はいはい、練習練習。わからないところはないかー?」
「あー!今無視したー!ダーリンひっどーい!」
本当にめんどくさい。
1人1人の課題に答えていると相田が俺を呼んだ。
「何がわからないんだ?」
「どうすれば先生に私の愛が届くのかがわかりません。」
「届くことはありません。他にわからないところある人いないかー?」
「あ、ちょっと待って!じょーだんだって!」
「なんだ、まだなんかあるのか。」
「クラリネット吹いてる姿って、ちょっとエロくなーい?」
「エロくない。もう他の教室行くぞ。」
「えー、あと3時間くらいいてよー。」
「その時間は部活終わってるだろ。じゃあ次の教室行くから、みんな聞きたいことがあったら来いよー。」
さっさと教室をあとにする。相田が何か言っていたが聞こえないフリをした。
一通り全ての教室を廻り音楽室に戻ると、相田が俺の椅子に座っていた。
「相田何してるんだ。練習は。」
「先生に会いに来たの。悪い?」
「聞きたいことであるのか?」
「うーん、じゃあ」
相田は椅子から立ち上がると、俺の方に歩いてきた。
「私、先生のこと本気で好きなんですけど、どうしたら振り向いてくれますか?」
「あのなあ。」
相田の真剣な表情に、俺はあしらうことを躊躇した。
「先生と生徒の恋愛は問題でしかない。最悪俺にその気が無くても教師を辞めさせられるかもしれない。だから俺は何をされても振り向かない。」
「じゃあ私の気持ちはどうすれば良いんですか。」
泣きそうな目をするなよ。
俺が悪いみたいじゃないか。
「まあ諦めるしかないな。」
「先生、恋ってそんなに簡単に諦められないですよ。」
「だけど諦める以外はない。」
「それだけで諦められるなら恋じゃないです。」
「16年そこそこしか生きてないガキが恋を語るな。大人になればわかるさ。」
「私が大人になったら、チャンスはありますか?」
「さあな。」
音楽室にクラリネットの1年生が入ってきた。
「相田先輩、パートで合わせるんで来てください。」
「わかった!ありがとね。」
1年生が出ていくと相田も音楽室の出口に向かう。
音楽室を出る寸前に相田が笑顔で振り向いた。
「私、諦めないから。」
ガチャリとドアが閉まると俺は大きくため息をついた。
「めんどくさい。」
「ダーリンおはよ!」
朝から僕の方に走ってきてハイテンションで挨拶をするこの生徒が問題児、相田心美。
うちの高校の2年生だ。
「おはよう。先生をそんな呼び方するんじゃないぞ。」
「えー、いつも呼ばせてくれるじゃないですかー。夢の中で!」
「夢と現実の区別くらいつけなさい。」
「はーい。」
「ほら、早く教室に行かないと遅刻なるぞ。」
「あ!ほんとだ!じゃあね、ダーリン!」
相田は下手くそな投げキッスをして教室に走って行った。
相田は僕のことが好きらしい。
先生として好きなのであればこれほど嬉しいことは無いが、相田は違う。
異性として好きらしい。
嬉しくないかと言われると正直悪い気はしない。
しかし正しいことではないのは明確だ。
だから彼女には諦めてもらわなければならない。
最悪、僕の教師人生が終わるかもしれないのだから。
日中の授業が全て終わり、音楽室には吹奏楽部の部員達が続々とやってくる。
部員が全員集まるとミーティングを行い、各々練習に向かう。
今日は各教室で楽器毎に別れて練習だ。
こういう時、僕は各教室を廻って練習を見てやるようにしている。
クラリネットの教室に着くとヤツの声が響く。
「ダーリンだ!待ってたよー!!!」
「だからその呼び方やめろ。1年生がマネするだろ。」
「なんで?私以外に先生のことダーリンって呼ばせないよ?それともまさか、浮気...」
「ちげーよ。ってか浮気も何も付き合ってすらないだろ。」
「私とは遊びだったのね。あんなに愛し合ったのに。」
「はいはい、練習練習。わからないところはないかー?」
「あー!今無視したー!ダーリンひっどーい!」
本当にめんどくさい。
1人1人の課題に答えていると相田が俺を呼んだ。
「何がわからないんだ?」
「どうすれば先生に私の愛が届くのかがわかりません。」
「届くことはありません。他にわからないところある人いないかー?」
「あ、ちょっと待って!じょーだんだって!」
「なんだ、まだなんかあるのか。」
「クラリネット吹いてる姿って、ちょっとエロくなーい?」
「エロくない。もう他の教室行くぞ。」
「えー、あと3時間くらいいてよー。」
「その時間は部活終わってるだろ。じゃあ次の教室行くから、みんな聞きたいことがあったら来いよー。」
さっさと教室をあとにする。相田が何か言っていたが聞こえないフリをした。
一通り全ての教室を廻り音楽室に戻ると、相田が俺の椅子に座っていた。
「相田何してるんだ。練習は。」
「先生に会いに来たの。悪い?」
「聞きたいことであるのか?」
「うーん、じゃあ」
相田は椅子から立ち上がると、俺の方に歩いてきた。
「私、先生のこと本気で好きなんですけど、どうしたら振り向いてくれますか?」
「あのなあ。」
相田の真剣な表情に、俺はあしらうことを躊躇した。
「先生と生徒の恋愛は問題でしかない。最悪俺にその気が無くても教師を辞めさせられるかもしれない。だから俺は何をされても振り向かない。」
「じゃあ私の気持ちはどうすれば良いんですか。」
泣きそうな目をするなよ。
俺が悪いみたいじゃないか。
「まあ諦めるしかないな。」
「先生、恋ってそんなに簡単に諦められないですよ。」
「だけど諦める以外はない。」
「それだけで諦められるなら恋じゃないです。」
「16年そこそこしか生きてないガキが恋を語るな。大人になればわかるさ。」
「私が大人になったら、チャンスはありますか?」
「さあな。」
音楽室にクラリネットの1年生が入ってきた。
「相田先輩、パートで合わせるんで来てください。」
「わかった!ありがとね。」
1年生が出ていくと相田も音楽室の出口に向かう。
音楽室を出る寸前に相田が笑顔で振り向いた。
「私、諦めないから。」
ガチャリとドアが閉まると俺は大きくため息をついた。
「めんどくさい。」