自由に羽ばたくキミが
西洋の雰囲気が滲み出てる咲名とは違って、塩顔と呼ばれるあっさり目の顔立ちの翼。


昔からモテたし最近の塩顔ブームも追い風に、しっかりとイケメンに育った。


そして父親譲りの高身長。
どちらの家系も身長には恵まれる。


咲名は168センチ、翼は178センチ。
父親は180で照樹は176、翼に抜かれた時の悔しそうな顔は今でもネタになるほど。


あとまだ伸びる可能性のある翼、虎視眈々と親父越えを狙ってる。


「咲名はもう歌ったり踊ったりは、全然興味ねーの?」


「んー、クラブで体揺らすくらい、歌はたまにカラオケ行きたいくらい。
唯一続けてきたものは体操くらいだけどまだやってる」


「体操ってお前、ありゃバレエだってェの」


「でもママは体操やるよって、ママがいなくてもやりなさいよって」


ラジオ体操の別バージョンくらいにしか思ってなかったそれは、実はバレエの基礎らしく。


おかげで姿勢はいいし柔軟性で言えばY字開脚なんて楽勝レベル。


「イギリスではピアノ弾いて歌ってると、隣の家の人が覗いてたりしてさ。そのままティータイムに誘われたり。
パーティでリクエストされたり、くらいはしてた」


「はは、海外らしいノリだな」


「そー、それが当たり前って言うか、受け入れられるから出来たことで。
日本だとねぇ、……今は全然歌いたくないかな」


申し訳ないけど、一緒に楽しめれる人もいないしって。


バンドとか、歌って楽しいと思える楽曲とか。
自分の感性を刺激してくるような、そんなアーティストがいないって。


音楽業界に生きる人達の前でシレッと言ってるけど、言われてる側も分かってるから悔しくも思うけど意地にはならない。


「あんな環境にいたらそりゃなぁ」


「バンドは楽しかったよ、けど底が知れてからは熱が入んなくて。お前のおかげで売れたと思われたくねーよって言われたんだよね、そんな事言ってるやつは人に愛される曲書けないよって思ったもん」


伝えたい事がそんな事で、誰が聞きたいのって。
鼻で笑ってる咲名、全くその通り。
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