自由に羽ばたくキミが
「人より多い親に愛されてるけど、人より孝行する相手が多いな」


「それ!けど親父もヘビースモーカーで大酒飲みでしょ?マージーでー長生きしてよ!」


「ビビらせんなァ!俺ァ健康そのものだ!」


「飲んだ次の日酒残りやすくなったし、腹出て来たし」


咲名にチクるように言う翼、ぶっちゃけイギリスの咲名の父親には会ったこともないから、自分の母親となった人にも父親にももう関係ないだろ、とは思うけど。


咲名の大切な人、というだけで、蔑ろにしてはいけないのは分かってるから。


こんな話の時は気持ちを分かってあげられない分余計な事は言わない事にしてる。


「うわぁダサい、かっこ悪い親父とはデートしないよ」


パパもお腹は出てたけど革ジャン姿は超クールだったよって。


「ママには親父から言っといてよ、帰ってきてること」


「とっくに言ったさ、安心した顔でへぇって言ってたなァ」


「あの人今何してんの?」


「年末大舞台に向けて、稽古の日々」


「今から!?どんな大舞台だよ!まさか本場で!?」


「そー、んで本場で稽古する為に、まずは日本で稽古だ。
一応母ちゃんの名誉の為に言っとくが、一歩も動かなかったんじゃねー、動いたんだ、けど受け入れられなかったんだ」


お前の父ちゃんにな、だせぇ姿は見せたくないから来るなって言われたってよって。


病気と聞いて、咲名の事もあるし一度連絡は取ったそうだけど。
老いて衰えた姿は見せたくなかったから、意地でも会わないって言われたわって。


「聞いてねー…言えよあの魔女め」


パパらしいし、ママらしいわって。


「直接責めなかっただけ良かった、会いたかったら会ってあげるって言っといて」


「責められたら言い返したのにって言ってたぞ、んで会いたくなったら帰ってきてもいいけどって伝えろと言われてる」


似た者同士、見た目も中身も本当にそっくり。


「うぜェ、絶対行かない」


「会いたいんだな、よしよし」


宣言しなきゃダメなくらい、決心がいるんだなって笑われてしまう。
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