自由に羽ばたくキミが
「例えばだけど、パパが最期作った曲って、未発表だと誰に権利があるの?」


「遺言書みてーなのに書かれてたらその相手だろうし、親族に委ねられるんじゃねェか?」


その辺は経験がないから知識不足だと、自分も曲を書く人間なのに少し危なっかしい。


「家中に五線紙が貼ってあってさァ、今時打ち込みでデモ作って、データで飛ばせる様なものをアナログにも程がある」


「マニアやファンにとっては堪らない代物だな」


何となく聞いてた照樹、咲名の為に書かれた曲を他人が貰っても嬉しくはないがファンなら聞きたいと言う。


照樹も音楽は好きで、咲名の影響でよく聞くUKロック、咲名の父親も好きだし向こうの仲間やブーツも実は羨ましい。


「ほとんどは詞も乗ってんだけど、何曲かは走り書きみたいなままで。
ちゃんと詞乗せて全部頭に入れるのにビザが切れるほどかかったけど。


あれ私が歌詞書いて歌ったりなんかは、向こうの親族や元バンドメンバー、所属してたレーベル…色んな人に頼まなきゃいけないのかねェ」


「全部覚えたってか!?」


「持ち出せないもん、そうするしかないでしょ。
もちろん忘れない為のメモ的なのは作ったけど」


題名やコード進行をざっくりね、と簡単に言うけど。


「何曲あった?」


「数えてないけど、質量的にフルアルバム三枚組は余裕で作れる」


なんて言うけど。


「歌いたいって事か?」


「全部の五線紙にDearSANAなんて書かれてたらそりゃね?聞きたくても音はないんだから自分で歌うしかないでしょ」


あ、そっちね。
自分の曲として世に出したいとかじゃなくて。


自分で楽しむ為ね、オーケー。


なんて、バレないようにガッカリするのは芸能プロダクションの経営人二人。


「それを親戚や仲間に発表されんのは悔しいな!聞かなかったのか?貰ってもいいかって」


「おばさんには好きにしろって言われた、元メンバーは聞く術もなし。
ね?取られるなんて言い方したくないけど、そうなってもおかしくないじゃん、そもそも娘がいるって公表さえされてないし」
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