自由に羽ばたくキミが
「私にしか分からないように全部まとめて順番ぐちゃぐちゃにして混ぜてきたし、隠してきたけど。
そんな歌がある存在だけは知られてるから」


身近な人には娘として紹介されてるし、家に人を招待してホームパーティを好んでた人だから。


出せと言われたら差し出すしかない。


「まぁでも、誰かが形にしてくれればいつでも聞けるし。手間は省けるんだけど」


お金目当ては嫌だなって。


当然現地では訃報はニュースになったし。
日本でも悲しんだファンは大勢いる。


世界的なバンドには一歩及ばなかっただけだから追悼リリースなんてすれば、それなりの規模で売り出されるだろうし。


仲間が賛同してトリビュートみたいな事になれば大ヒットするだろう。


それをビジネスにされて誰かの私腹を肥やすだけなら、触れないでいて欲しいと言う咲名。


「夢がないから、何やろっかなーって思ってた。
アイドルになりたい、歌手になりたい、ダンサー、俳優、…医者や消防士、保母さんになりたいって、そういう子は周りに沢山いたけど私にはこれと言ったものがなかった」


「俳優楽しいよ、演技とはいえ消防士にだってサラリーマンにだってなれる、俺は今のところバカ明るい高校生かクソヤンキーしかなった事ねーけど」


それほぼ過去のあんたじゃん、演技なの?と笑う咲名。


「漠然とした夢で言えばあの日に叶っちゃったし、子供の頃から追いかける夢もない、楽しい事を探した延長にあるかなって思ってたらこんな歳になったけど」


「全然遅くねーから」


「弁護士になりたいとか、お前の嫌いな勉強から始めるとなると気合い入るだろうけどな」


「なんでもやりたがったのになァ、お稽古事が好きだったのに」


「身に付いたけど活かせてはないね、無駄なお金使わせたわ」


「いやいい、空手は護身術にいいしピアノは音感が養われるしコード覚えれるし、ダンスもリズム感が養われただろうし、バスケは体力が付いた」


役に立つとかじゃなくて、やれることが多いのは生活が豊かになるからって。


たまにやってみればリフレッシュにもなる、父親の言う通りだった。
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