自由に羽ばたくキミが
「パパが遺してくれた物、あれをどう形にするかは探しながらだけど。愛してくれた人の手元に届ける事が今の夢…かもしれない」


「ん、それでいい」


「あと親父とママに親孝行、せめて素敵なダーリンを見つけるよ」


「それは一番ゆっくりでいいぞ、あと婿を取れ」


寂しいから急ぐな、嫁になんて行くなって。
あれ?親孝行になると思ったのにって笑う咲名。


「あんまり得意じゃないから、それはお言葉に甘えよう」


「そうじゃん、お前男は?」


あんまりしたくない話だけど、始めたのは自分だから受け答えはするか、と。


「彼氏がいるかいないかで言えばいない、今となっては交際の事実があったのかさえ分からない」


「不純異性交際があったと見なしていいのか!?」


「翼うるさい、片っ端から男避けしてきたくせに。
イギリスって、明確に付き合おうっていう簡単に言えば告白、みたいなものがないからさ」


デートして、これは付き合ってるの?と思ってれば友達や家族に恋人だって紹介されたり。


宣言から始まる事がないから、と説明するんだけど。


「ま、まぁ…海外だし多少その辺はラフに過ごしてると思ってはいたけど」


あんまり聞きたくないのは可愛い咲名のリアルな恋愛模様。
歳も歳だし、何も無い訳が無いことは分かってる。


交際の有無を聞きたいだけだったのに、と三人は明確な発言を避け始める。


「いや日本の話だよ、交際の事実があったのか分からないってのは」


「なに!?もてあそばれたのか!?」


「んー、ん〜?被害者ヅラしたら良くない気もする、そんな環境で生きてきたから私も別に、ハッキリ気持ちを示した事がないかも?」


でも、と続ける咲名、グイッとお酒を煽ってから、ため息を誤魔化すためにふぅ、と一呼吸おいて。


「役に立たないと言われたからには、下心があったのかも?」


こんなことを言えば悲しむのは父親、下心が何かなんて何となく分かってしまうし。


翼も、似たような経験があるから心中お察しします、みたいな顔をしてくる。
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