自由に羽ばたくキミが
ふぁ〜と大きな欠伸、助手席で眠そうにする咲名から移されてコンボを決める照樹。


「明日の朝は俺は早いけどお前はゆっくりでいいから、現場の移動のついでに迎えに来るからな」


寝る前に話そうと思っていたけど今にも限界そうな姿を見て、早めに伝えたはいいけど。


まだ飲むと言った割にはダウンも早いのに笑えてしまう。


「あら、手間おかけしてすみませーん」


「ほんとにいいのかよ、こっちに移住する準備やらなんやらでしばらくはゆっくりすりゃいいのに」


「毎日ずっと何かやる事がある訳じゃないからね、しばらくは半々にはなっちゃうけど」


帰国当日にこんなに現場を回ったのは他でもなく咲名の申し出があったから。


せめてその日くらいゆっくりすれば、と言ったのに。


「照にぃがいなきゃ当分何も出来ないのに、時間だけあっても仕方ないから」


早く役に立てた方が有意義、なんて。


「お前の家電や家具も確かにな、見に行くには俺が必要か」


「家電はそこそこでいいけど、インテリアはこだわりたいからその辺頼むよ」


高級志向ではないけど、デザインやカラーはごちゃごちゃさせたくないから統一したくて、と言っていたから、その場しのぎでの支度さえ出来なかった。


「ベッドはダブルか…せめてセミダブルだね、ソファはL字がいいなァ、あえて角で横になるのが好きなんだ」


「ま、まぁ今までの生活を考えてもお前の常識では当たり前に置けるだろうけど。
いいか?研修生やデビュー間もないやつが住む所がそんなでけーもんばっか置けると思うなよ?」


地元の家も、家族で住んでた家もデカかったし。
イギリスでは日本人とそもそもの体格が違うから普通が日本より大きめ、かもしれないし。


家系的に窮屈な思いをしたことが無い咲名、照樹の心配する咲名の常識は一般人で言えばただの富裕層の贅沢。


「え、寝室ないの?」


「あるけど、ダブルなんて置いたらそれで終わりよ」


「他に何が要るの、クローゼットは?」


「…あるけど、ダブル置いたら開けるか分かんねー」


よりによって開くタイプ。
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