自由に羽ばたくキミが
サイズの合わない、トレンドもクソもないスーツのせいで今日も咲名本来の魅力の半分も見せない外見、申し訳なさ一杯の照樹。


けれど本人がすでに身を包んでいたから、少し救われる。


「…メガ、ネ?」


おい、ダサさに追い討ちかけんなよって思ったのは。
本当なら可愛いはずの丸めのフォルムに大きめレンズのデザインが、逆に一周回ってダサく見えるせい。


ぬけ感とか、レトロ感とかが、雰囲気ではなくてただただリアル。
トレンドは時代を経て繰り返すはずだが。


「目悪いんだよね、昨日はワンデー使ってたけどコンタクト買いに行かなきゃ。
ダサいことは分かってる、ここまで来たらもう怖いものは無い」


メガネなくても何とかなるけど、運転は出来ないし目を細めてしまうからって。


「あ、言っておくけどもう少しメイクしようと思ったんだよ?けどまぁ…これのうちはいいかって諦めちゃってさ」


「早いとこ挨拶終わらせて、スーツ脱げるように頑張るわ」


「むしろここまでダサいとこっちの方が失礼に当たりそう、マーチンよりね」


小ぶりのハンドバッグも用意はしてたから、必要最低限の荷物を持って出発。


今はスタキャチャンネルのリハーサル中らしく、本格的に動いてる現場で大勢のスタッフに晒される事を覚悟した咲名。


少しの愛想笑いと、控えめの発言、ダサい見た目とは裏腹姿勢の良さとすらっとした体型、そして新入社員と言うわりに緊張を見せずに落ち着いた態度。


そんな照樹の隣の咲名を昨日ぶりに見たLIBERAは。


「昨日より酷なってない?なんやあのメガネ」


「照樹さん言ってたよ、俺が用意したスーツが悪いだけだって」


「そりゃ素材はいいやろけど、飾る気もないやん」


やっぱり見た目のダサさに目が行ってしまう。


「ふふ、ねーあの子ほんとダサいよね」


お昼時、衣装の支度やメイクを終えたケバ嬢三人は現場の雑務に周り、お弁当を配っていて。


そんなメンバーの会話に乗ってくる。


「整えたったらええやないすか」


「服あげれば」


「喋りたくないもーん」


会話だけ聞けばただの悪口だけど。
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