春の闇に連れ去らレ

考えすぎて頭を使い過ぎて熱が出たのだと思ったけれど、言わないでおこう。

「こっち来い」

緤がソファーを指す。あたしはそれに従った。

テレビの時間表示は午後五時を示していた。
それに一番驚いた。

窓の向こうに見える景色は朝焼けではなく夕焼けだったらしい。どれだけ眠ってたんだろう。

あの太陽は夜明けを連れてきているわけじゃなくて、夜を連れてきているのか。

「緤、さん。おいくつになるんですか」

尋ねてみた。昨夜殺し合おうとした二人とは思えない雰囲気の中。
どうせ、もう会うこともないのだし。

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