春の闇に連れ去らレ
灰色と夜に光る。
手首に、あたしが首に巻き付けていたロープが巻かれていた。
「簡単に死んでもらっても困んだよなあ」
前を歩く男が煙草を吸いながら言う。
父のことか、あたしのことか。
「頭、親父に持っていく前に……」
「馬鹿か、知られたらど突きまわされるぞ」
「すいあせん」
腕を強く引く男がニヤニヤと笑いながら謝る。こいつら、ヤクザらしい。
父がどこから金を借りているのか知らなかった。どこにも返せなくなって、自転車操業になっていたのは知っていた。どこから金を借りたって、こいつらから最初に手を切るべきだった。