春の闇に連れ去らレ
結局、生き血を啜ることも無かったナイフ。
男共が違う話題で盛り上がり始めたので、あたしは窓の外を見ていた。
一般道から高速へ。一体どこの会場まで行くのか。
おりたのは県をひとつ跨いだ向こう。
麻が車をどこかへと持っていく。あたしも車で待ちたかった、と降りてから思った。
いや、麻と一緒にいるのも命の危険を感じる。
通夜会場は厳かな雰囲気で、参列者たちも普通の人間には見えない。自分の目にそういうフィルターがかかっているからか。思えばシュウもそっち側だ。
緤の後ろを静かに歩いて、なるべく気配を殺した。
「絲、受付行ってこい」