春の闇に連れ去らレ
シュウは本妻の子供。
緤は妾の子供。
血が二人を分つ。
頭を撫でると、鋭い視線がこちらを向く。
虎か、豹か、獅子か。
「嫌なら退いてください」
「あ? てめえが退け」
知ってはいたが、何たる暴君。
勝手に乗ってきたのはそっちだろうが、と喉までこみ上げる。
お互い意地でも退かないので、沈黙が降りる。
「そういえば、もうすぐ成人ですね」
「あーそうだな」
「今年は何が欲しいんですか」
去年の誕生日、緤はシュウにアイロンを貰っていた。スチーム付きの良いやつ。
昔はハウスキーパーさんが来て家事全般をやってくれていたが、契約が切れてから結んでいないらしい。