春の闇に連れ去らレ

誰がそれを使うんだ、とシュウも思ったらしいが、緤は自分が使うと言った。
言ったけれど、一週間もしないうちに「飽きたからやる」とあたしへぶん投げてきた。アイロン台もセットで。

何がしたかったのかよく分からないけれど、棚ぼたで良いアイロンを手に入れたあたしは、それで緤の服にもアイロンをあてることになった。

「なんかくれんの?」

少し驚いたように緤がこちらを見上げた。

「え、まあ、あげられるものなら……?」

ブランド物の財布とかならぎりぎりイケると思う。ぎりぎり。

「お前が欲しい」

起き上がって、緤は言った。

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