春の闇に連れ去らレ
月よ蝶よ花よ。
ふと自分が二十歳だったときのことを思い出す。
そういえばここに来たのが二十歳だった。
二年経ったということか。ピピー、とご飯の炊けた音に炊飯器の方を見ると、同時に玄関の扉が開く音。あたしは緤ほど耳が良くないので、足音で誰なのか判断できない。
現れたのはシュウだった。
「緤は?」
「友達か彼女とパーティーかと。たぶん今日は帰ってこないと思います」
「携帯置いて行ったな」
それは知らない。
シュウは舌打ちをしてリビングを出ていった。寝室に入って行ったのだろう。
あたしは切りものを再開して、お鍋に入れた。