春の闇に連れ去らレ

あんたが返事しろって言ったんだろうが。

顔面の片側を押さえて起き上がる。
畳に赤いものがポタポタと落ちていた。あ、血か。

「シュウ、持って帰れ。畳がこれ以上汚れてしまう」

背後で立ち上がり、顔面を押さえる方の腕を掴まれた。庇った方の腕は感覚がなく、垂れ下がるまま。

車に戻ると、麻が運転席でテレビを観ていた。
後部座席に押し込まれ、車内の電気がつく。シュウの手が顔に触れた。

「目の上を切っただけか。頭に当たらなくて幸いだったな。腕は」
「え、ナイフちゃんどーした」
「折れてはないだろうけど、罅は入ってるかもな」

< 49 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop