春の闇に連れ去らレ
あんたが返事しろって言ったんだろうが。
顔面の片側を押さえて起き上がる。
畳に赤いものがポタポタと落ちていた。あ、血か。
「シュウ、持って帰れ。畳がこれ以上汚れてしまう」
背後で立ち上がり、顔面を押さえる方の腕を掴まれた。庇った方の腕は感覚がなく、垂れ下がるまま。
車に戻ると、麻が運転席でテレビを観ていた。
後部座席に押し込まれ、車内の電気がつく。シュウの手が顔に触れた。
「目の上を切っただけか。頭に当たらなくて幸いだったな。腕は」
「え、ナイフちゃんどーした」
「折れてはないだろうけど、罅は入ってるかもな」