春の闇に連れ去らレ
どうして医者のように触診が出来るのかと、ぞっとしてしまう。
あたしは返事をしないでいると、テレビから聞こえる喘ぎ声が響いた。
「麻、止めろ」
「すいやせん」
AVだったらしい。
「おい、頭やったか?」
「いえ。お腹が空いて……さっきまでは吐きそうだったんですけど」
溜息を吐かれ、車はゆっくりと走り出した。
病院でシュウと同じ診断が下され、あたしの腕は全治三週間ほど。
目の上の傷は大事ではないとのこと。
「ここにいる……ああ」
再度車に戻ると、シュウが電話に出ていた。
なんとなく、相手は緤だろうと察した。