春の闇に連れ去らレ
父の交友関係が碌でもないことは知っていた。
「ここに転がされる奴は大抵怖がって震えが止まらん。肝が据わっとるな、お前」
笑いながらそう言うが、誰も相槌を打つこともしない。
どうでもいい話だからだろう。
「泣いて乞うてみい」
後ろにいた男が近づく音。肩を掴まれて、口に貼られたテープを剥がされた。
痛い。
口から空気を吸い込む。鼻で吸うより大きく酸素が取り入れられた気がする。
「泣かんのかいな。つまらんのう」
他人の反応を見て楽しむのが趣味なのか。友達が少なそうだ。
わたしも全然友達はいないけれど。