春の闇に連れ去らレ
後部座席の扉を開ける緤を見て、あたしは助手席のノブに手をかける。
「後ろに乗れ」
「え、何でですか?」
「早く乗れ」
理由は言わないらしい。まあいいか、と思って緤が開けてくれた後部座席に乗り込む。
あれ、と思った。
入れ違いに運転席に座っていた人間が出ていったから。
緤が乗り込んで、扉が閉まる。ロック音。
何も言わずにTシャツの裾を捲られた。驚きすぎて声が出ない。いや、下着は着ているので何が見えたかって、下着と腹部だけだけれど。
「腕と顔、他は」
「な、なな、んですか」
「あのくそ爺にやられたとこだよ」