春の闇に連れ去らレ
怒っているんだな、と分かった。
緤は静かに怒っていた。
でも、何に怒っているのか分からない。
やられたのはあたしで、緤自身に何の影響もない。
「下も脱げ」
沈黙を肯定と取ったらしく、ジーパンのウエスト部分に親指を入れて下げてこようとする。
「他はないです、全然」
「じゃあシュウとSM、」
「もっとないです!」
Tシャツとジーパンを死守する。必死に言葉を紡ぐと、緤は手を離した。
「車出してくれ」
窓を開けて緤が言う。運転席に人が戻ってくる。事前に話していたのか、すんなりと事が進んでいく。