春の闇に連れ去らレ
カラスの行水に及ばぬ。
視線を感じる。
すれ違う人々からの視線。主に女性が多い。
一度斜め後ろに行ってから、あたしに返ってくる。
「……何か食べたいものでも、あるんですか?」
ここはスーパーの食料品売り場。食べ物を求めて、一般人はここへ来る。
緤は興味なさげにこちらを見て、「別に」と一言。どっかの大女優か。
買い物カゴを持ってお惣菜コーナーをうろつく。作るより高くなるけれど、手間を省いて貰えるなんて有り難い。
今日明日を凌げるお惣菜と、あとは冷凍食品とかで……。
一度カゴを置くと、緤がそれを持ち上げた。