春の闇に連れ去らレ

「何か言いたいことはあるか」

尋ねられる。

「話が長い」

言いたいことを言ったら、笑われた。
それから、頬を殴られた。
痛い。

「シュウ、連れて行け」

再び床に転がされたわたしを、後ろにいた男が掴んで立ち上がらせた。
来た扉の方へ向かう途中で男が呼び止められる。

「待て。もうすぐアレの誕生日だったな?」

その会話は今しないといけないのか、と話せる口から出そうになった。

「セツですか? そうですね、明後日です」
「そうか、そうか」

頭と呼ばれていた男は、シュウという名前らしい。無表情だったが、その会話に少しだけ表情が強張った。

< 7 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop