春の闇に連れ去らレ
「何か言いたいことはあるか」
尋ねられる。
「話が長い」
言いたいことを言ったら、笑われた。
それから、頬を殴られた。
痛い。
「シュウ、連れて行け」
再び床に転がされたわたしを、後ろにいた男が掴んで立ち上がらせた。
来た扉の方へ向かう途中で男が呼び止められる。
「待て。もうすぐアレの誕生日だったな?」
その会話は今しないといけないのか、と話せる口から出そうになった。
「セツですか? そうですね、明後日です」
「そうか、そうか」
頭と呼ばれていた男は、シュウという名前らしい。無表情だったが、その会話に少しだけ表情が強張った。