春の闇に連れ去らレ
連れ立ったもう一人がその後ろで笑って「やめとけよー」とニタニタ笑っている。
「あーこれは慰謝料案件だわ。どうしてくれんだよ」
面倒なことに巻き込まれるのは御免だ。
さっさと謝って去りたい。道行く人からの視線が痛くなってきた。
「すみませ――」
どん、と背中がまた違う人間にぶつかった。驚いて振り向き、見上げる。
「あ? こっちは腕折れてんだぞ、てめえが慰謝料払え」
緤が凄んでいた。
その言葉に「あたしの腕が折れたのは大半があんたの所為だけれど」という思いが湧かないわけもない。