春の闇に連れ去らレ
相手はあたしよりも年上だ。そんな風に凄んで大丈夫なのか、とハラハラしながら相手を見る。
しかし何故か、男は顔を強張らせている。
後ろにいた男も急に顔を背けた。
「てめえに言ってんだぞこら」
もしかして自分に言われているのかと、思わず緤の方を向いた。
視線の先は男にあり、あたしを挟んで行われているやりとりに、あたしの存在は無意味だ。
「……んでもねえっす」
ぼそっと呟くように言って、男は去って行った。
「お知り合い……ですか?」
「知らねえ」
答えて、緤も歩き出す。
今のは、知らない相手にも顔を知られているということだろうか。
有名人なのか。