春の闇に連れ去らレ

ぐぐ、とキャミソールを死守する。

「髪洗えねえだろ」
「片手で洗います」
「わかったわかった」

ぱっと手が離された。ホッとしたのも束の間、腕を引かれた。

浴室に連れ込まれ、間髪入れずシャワーが浴びせられる。

なにがわかったんだこの男。

濡れた髪を耳に掛けて緤を見る。

ははは、と無邪気に笑っていた。人にシャワーをかけて笑うって、どんなイジメっ子だ。

緤にセのつく友人以外はいるのだろうか、と少し不安すら覚える。

「緤さん、お友達はいるんですか?」
「あ?」
「遊ぶ友達は……ああ、でもパーティーをしてくれるお友達はいるんですもんね」

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